
空手を始めた初心者の頃に大変なのは、形を覚える事が一つ挙げられます。
形は基本の技を組み合わせて出来ているため、基本が出来ていればさほど苦労はしないのですが、初心者の事は基本すらままならない状態なので、一つの形を覚えるのも一苦労です。
せっかく空手を始めたのだから、早く上達したいという気持ちは皆さん持っているでしょう。
この記事では、空手の形が人より早く上達するための秘訣をお伝えしていきます。
其の1:形は基本技を極めるべし
正しい立ち方と姿勢を身につける
空手の形を上達させるためには、まず正しい立ち方を確立する必要があります。
特に基本中の基本である「前屈立ち」と「後屈立ち」は、徹底的に磨くべきです。
安定感のある立ち方を身につけることで、動作のブレが生じにくくなり、技のスピードが上がり、形の完成度が上がります。
また、姿勢を真っすぐ意識する事で、着眼(視線の方向)や技の伸縮も良くなります。
初心者は焦らず、立ち方と姿勢を一つ一つ確認しながら練習しましょう。
身体の軸を意識する
形を上達させるためには、体の軸を安定させることが重要です。
体の軸がぶれてしまうと、技に「力強さ」や「キレ」が出にくくなります。
特に回転動作や素早い切り返しの動きでは、軸の安定が不可欠です。
背骨をしっかり立て、足裏で床をしっかり捉えつつ体重が両足にかかるよう意識しましょう。
体の軸が整うことで、動作がスムーズになり、バランスもとりやすくなります。
基本動作を反復練習する
空手の形を構成する一つ一つの技は、全て基本技に基づきます。
そのため、基本動作を繰り返し練習することが形上達の鍵となります。
反復練習を行うことで、動きが染みつき、無意識のうちに正確な技を繰り出せるようにしましょう。
また、同じ動きを繰り返すことで悪い癖の矯正も可能です。
「練習あるのみ」という言葉通り、基本動作を怠らず毎日続けることが形上達の道です。
呼吸法で力強さを引き出す
空手の形では、呼吸を適切に活用することで、技の力強さや動きのキレを引き出すことができます。
例えば、技を繰り出す時に息を力強く吐き出すことで、技の力強さとキレがアップします。
また、呼吸を制御して、息継ぎをすることで疲労を軽減し、形の演武中でも安定したパフォーマンスを維持できます。
正しい呼吸法は心身のリズムを整える上でも役立つため、初心者の頃から意識して取り組むことをおすすめします。
其の2:形の技術を磨く
形は「技の強弱」「技の伸縮」「技の緩急」の3つの要素が重要です。
これらの技術を磨くためには、以下の練習方法を実践しましょう。
動作を分解して練習する方法
空手の形を上達させるためには、動作を分解して練習することが非常に効果的です。
形を一通りの流れの中で、そのまま練習するのも良いのですが、形の技術を磨き動きの精度を高めるという意味では、一つ一つの挙動を分解して練習する事も重要です。
一つの挙動を2~3段階に分解することで、手や脚の向きや位置、頭と腰の動きなど、一つの動きを細部に渡って意識した練習ができます。
一つの動きを突き詰めて練習していく事で、その動きのパターンが出来上がり、無意識に出来る技へと昇華させていく事で、形を一連の流れで行ったときにもキレのある技が打てるようになります。
動きに緩急をつけて効果を出す
緩急の付け方を意識することで、形の迫力や美しさが格段に向上します。
ただ流れるように一定の速度で動くと単調で力強さに欠けるため、早い動きと遅い動きを使い分けることが重要です。
例えば、「突き」や「蹴り」の際には素早いキレを意識し、それ以外の動作や構えではあえてゆったりした速度で表現することで、全体にリズムを生み出します。
また、実際の試合になると緊張から普段よりも速い形の演武になりがちです。
なので、普段の練習では挙動の「間」をしっかりと取って練習しておくと、リズムの良い演武が出来上がります。
緩急をつけたパフォーマンスを過剰にやりすぎるのは、審査員によってはマイナスとなってしまう事もあるため、注意が必要でもあります。
動画撮影でフォームをチェック
自身の形を客観的にチェックするには、動画撮影が最適です。
意外と自分の思っている動きのイメージと客観的に動画でみた自分の動きは違います。
自分の中にあるイメージの方が美化されがちです。
練習中の動きを定期的に動画で確認する事で、自分のイメージの中の動きと実際の動きとを一致させたり、自分のフォームを細かく確認することで改善点が見えて浮かび上がってきます。
動画を基に改善すべき点を具体化し、繰り返し練習することで、さらに形の完成度を高めることができます。
鏡を使って動きを細かく確認する
鏡を活用した練習は、空手の形の上達にとても効果的です。
鏡を見ながら練習することで、自分の動作や姿勢をリアルタイムで確認、修正できます。
自分の動きを視覚的に確認しながら訓練を積むことで、より正確で美しい形を身に付けることができます。
鏡を使って動きの確認をする事も、動画を撮って動きの確認をする事も自分を客観的にみることで新たな課題を発見することに繋がります。
鏡と動画撮影、似たような事をしていますが、この2つの方法には練習効果の違いがあります。
鏡を使った練習は視覚情報が優位です。
鏡に映った自分の動きを確認して、動きを修正するわけですから、修正できたか確認するのも視覚情報です。
鏡は体性感覚が少し疎かになりやすいわけです。
反対に動画はどうでしょう?
動画も視覚的に確認しているのですが、修正するのは自分の過去の動き、つまりは過去の感覚や自分の持つイメージなわけです。
自分ではこう動いたつもりの感覚と実際の動画でみた視覚情報を照らし合わせる作業なので感覚器に働きかける練習といって良いでしょう。
どちらの方が優れた練習かではなくて、どちらも上達するうえでは大事な練習方法なので、練習効果の違いを理解して、どちらの練習にも定期的に取り組みましょう。
其の3:意志と情熱と継続力が形を上達させる
練習計画の立て方とモチベーション維持
空手の形を上達させるためには、ただ何となく練習するのではなく、しっかりと練習計画を立てることが重要です。
まず始めに、自分の現状や目標を把握します。
「昇級審査に合格する」「大会で上位に入る」など何でも良いので目標を決めましょう。
目標が決まったら、次はその目標に向けて自分への課題を決めます。
「大会で上位に入る」であれば、予選を勝ち抜かなければならないので、基本形の習熟が必要ですし、勝ち上がっていけば指定形の演武の準備をしなければなりません。
基本形の中で苦手な形があれば、苦手な部分の克服をしておかなければならないし、指定形のうちで、何を自分の得意形にするかを決める事も自分への課題です。
このように目標を決めて、自分の現状を分析する事で、どの部分を重点的に練習すべきかが明確になってきます。
後は、目標の期日に向けて、週ごと、日ごとに解決すべき課題と具体的な練習内容を決めていくことで効率的な練習が可能になってきます。
モチベーションの維持も大切です。
一人で練習を続けているとどうしてもマンネリ化してしまうことがあります。
その場合、目標を小さく分けて達成感を得たり、他の仲間と練習を共にすることで刺激を受けると良いでしょう。
また、自分の上達を記録するために動画を撮影し、形の進歩を確認するのもモチベーションアップに繋がります。
トコトンお手本を参考にする
空手の形を上達させるためには、成功例を参考にすることが有効です。
大会で活躍している選手の形や、指導者が示すお手本を観察することで、自分が目指すべき姿が明確になります。
今はYOUTUBEですぐに参考になる動画が出てきます。
その際、ただ観るだけでなく、立ち方や呼吸の使い方、リズム、緩急、力の使い方などを細かく分析し、自分の形と比較することで参考にすべき点を発見していきます。
空手の形の上達には近道はなく、小さな改善を積み重ねる必要があります。
一度ですべての動きを完璧にすることはできません。
まずは一つひとつの動作における立ち方を丁寧に見直していきましょう。
苦手な部分をいくつかの挙動で区切って、重点的に練習する事も効果的です。
苦手なパートは、その動きの神経回路がまだ十分に出来上がっていない事を意味しています。
どんなに下手でも、何回も行っていればその動きを身体が学習し、円滑に出来るようになります。
最初はゆっくりでいいので、丁寧に動作を学習します。(この時点で間違えていると、その後の修正が苦労します)
そこから徐々にスピードを上げていき、早く動いてもゆっくり丁寧にしている時と変わらないレベルの動きまで昇華させましょう。
其の4:2倍速で形を上達させる秘訣
ペース配分を考えて演武中の疲れを防ぐ
空手の形を練習する際は、ペース配分を意識することが重要です。
集中力を保ち、常に全力を出すのは容易ではありません。
形を演武する際は、自分の中で呼吸法と挙動のリズムを確立して、ペース配分の練習もしておきましょう。
間の取り方や緩急の付け方、呼吸を整えるポイントなどを意識して練習に取り組むと、形の演武途中での疲れを防ぐことが出来ます。
試合を想定した緊張感のある場で実践力をアップさせる
形上達のためには、試合を想定したシミュレーション練習が非常に効果的です。
実際の試合では、緊張感や集中力が求められます。
そのため、練習の中であえて緊張感のある環境を作って演武することが重要です。
例えば、他の仲間が注目する中で演武を行ったり、模擬試合のような形で練習を行ったりしてみましょう。
おそらく普段の練習よりも演武後の疲労感が違うはずです。
それだけ緊迫した場面で演武する事は、普段の練習と違うわけです。
常に試合の場を意識した練習をすることで、より実践的な形の演武をした方が、上達が早くなるはずです。
指導者や仲間のフィードバックを素直に聞く
指導者や仲間からのフィードバックを大事にすることで、上達への近道となります。
他の人が指導してもらった事さえも、自分事のように聞いてみましょう。
自分が出来ている、出来ていないに関わらず、指導を受けている内容は形が上達するための要点のはずです。
指導されているのは自分でなくても、自分事として聞くことで、成長速度は人の2~3倍になるはずです。
それだけ、人よりも意識的に練習に取り組めているのですから当たり前の話ですね。
視線(着眼)で表現力を高める
形の練習において目線や視線は、表現力を大きく左右する要素です。
着眼と呼ばれる、目線をしっかりと意識することで、形の中に見えない相手が存在する事ができます。
また、着眼がしっかりする事で、形の動作が引き締まり臨場感が出てきます。
視線の方向動を意識する事は動作の安定性も向上させます。
形は想定した相手がいますので、視線の方向を定める事で動作を連動させ、動きをスムーズにし自然な流れと技の一体感を生み出します。
まとめ
空手の形が上達するために練習で意識するべきポイントを挙げていきました。
何度も言いますが、形が上達するためには近道はありません。
地道に基本技を積み重ね、技術を磨き、情熱を持って練習を継続していく。
この積み重ねが形を上達させ、自然な形で技が出てくるようになると思っています。
今回挙げた練習のポイントを意識して、形が上達するように取り組みましょう。